骨粗鬆症の薬を飲んでいてもインプラントできる?注意点と相談のコツ(MRONJ含む)
2026年01月25日
骨粗鬆症でもインプラント治療は可能なのか
骨粗鬆症と診断されている方がインプラント治療を検討する際、「薬を飲んでいるから無理なのでは?」と不安に感じることは少なくありません。
結論から申し上げますと、骨粗鬆症の方でもインプラント治療は可能です。ただし、服用している薬の種類や治療期間によっては注意が必要となります。近年の治療技術の進歩により、骨粗鬆症の患者様でも安全にインプラントを受けられるケースが増えているのです。
骨粗鬆症は骨密度が低下し、骨がもろくなる疾患です。高齢者や閉経後の女性に多く見られ、骨折しやすくなるという特徴があります。インプラント治療はあごの骨に人工歯根を埋め込む治療法であるため、骨の状態が治療の成否に大きく影響するのです。
骨粗鬆症があっても、骨密度をしっかりと評価し、その結果に基づいた治療計画を立てることで、インプラント治療を成功させることができます。多くの歯科医院では、CT スキャンなどを使って詳しく骨の状態を調べ、どの場所にインプラントを入れるか、どんな材料を使うかなどを慎重に決定しているのです。
骨粗鬆症治療薬がインプラントに与える影響

骨粗鬆症の治療には、骨の密度を保つためのさまざまな薬が使われます。
特にインプラント治療との関連で注意が必要なのは、「ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)」と「デノスマブ(プラリア®)」という2種類の薬です。これらの薬は骨の吸収を抑え、骨密度を上げるために広く使われていますが、インプラント手術の際には特別な配慮が必要となるのです。
ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)の影響
ビスフォスフォネート製剤は、骨の吸収を抑え、骨密度を上げるために広く使われている薬です。注射薬と内服薬があり、骨粗鬆症の他に、がんの骨転移の治療にも使われています。
この薬の最大の問題点は、ごく稀にですが、顎の骨の代謝を抑制し、「顎骨壊死」という重篤な合併症を引き起こす可能性があることです。顎骨壊死とは、顎の骨の血流が悪くなり、骨の一部が死んでしまう病気を指します。インプラント手術は、顎の骨にインプラント体を埋め込む外科的な処置であるため、ビスフォスフォネート製剤の影響で骨の治癒がうまくいかず、顎骨壊死のリスクが高まることが指摘されているのです。
デノスマブの影響
デノスマブは、骨の吸収を抑制する新しいタイプの骨粗鬆症治療薬です。6ヶ月に1回の皮下注射で投与され、ビスフォスフォネート製剤と同様に、インプラント治療の際に顎骨壊死のリスクを高める可能性があります。
骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(MRONJ)について
骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(MRONJ)は、骨粗鬆症の薬によって、あごの骨が細菌感染して腐ってしまう病気です。口内に骨が露出し、強い痛みが出たり、歯が抜け落ちるなどの症状が現れることがあります。
日本における発生頻度は、ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)の経口薬において0.01%〜0.02%、注射薬では1〜2%と報告されています。海外での報告では、米国口腔顎顔面外科学会(AAOMS)が経口薬0.01%、注射薬0.8%〜1.2%、欧州口腔顎顔面外科学会が経口薬0.01%〜0.04%、注射薬0.88%〜1.15%としています。
出典
より作成
インプラント治療前に必ず伝えるべき情報
骨粗鬆症の治療薬を服用されている方がインプラント治療を安全に受けるためには、歯科医師への正確な情報提供が不可欠です。
インプラント治療の相談をする際には、必ず歯科医師に以下の情報を正確に伝えましょう。骨粗鬆症の診断を受けていること、服用している薬の名前(ビスフォスフォネート製剤、デノスマブなど)、治療薬の投与経路(内服薬か注射薬か)、治療期間(いつから薬を飲んでいるか、注射をしているか)といった情報が重要となります。
内科医・主治医との連携の重要性
インプラント治療を開始する前に、歯科医師は患者様の内科の主治医に病状照会を行います。これにより、インプラント治療が患者様の全身の健康に悪影響を与えないか、また、顎骨壊死のリスクを避けるために、一時的に薬の服用や注射を休止すべきかなどを確認するのです。
患者様ご自身も、歯科治療を受ける予定があることを主治医に伝え、事前に相談しておくことをお勧めします。歯科医師は、主治医からの情報をもとに、インプラント治療が可能かどうかを慎重に判断していきます。
治療が可能なケースと難しいケース
薬の服用歴が短い場合、例えばビスフォスフォネート製剤の内服薬で服用期間が短い場合など、リスクが低いと判断されれば、インプラント治療が可能となる場合があります。また、主治医の判断で、インプラント治療の前後で一時的に薬の服用を中止できる場合は、リスクを下げて治療を進めることが可能です。これを「ドラッグホリデー」と呼んでいます。
一方で、長期間にわたりビスフォスフォネート製剤を服用している場合や、注射薬を使用している場合など、顎骨壊死のリスクが高いと判断されると、インプラント治療は行わない方が良いと判断されることがあります。この場合、インプラント以外の治療法、例えば入れ歯やブリッジなど、顎の骨に負担をかけない治療法を検討することになるのです。
骨粗鬆症の方がインプラント治療を成功させるためのポイント

骨粗鬆症の方がインプラント治療を受ける際には、いくつかの工夫と対策があります。
精密な診断と計画立案
骨粗鬆症の患者様にインプラント治療を行う際、まず重要なのが精密な診断です。歯科用CTを使用し、顎の骨の状態を三次元的に詳細に把握することが可能となります。特に、骨密度の低い患者様の場合、インプラントを埋入する部位の骨質がどの程度なのかを正確に評価することが、治療成功の鍵となるのです。
また、骨密度の低下が顕著な場合には、骨補填や骨移植の必要性を事前に検討することもあります。さらに、患者様の全身の健康状態や服用している薬剤(特にビスフォスフォネート系薬剤)も考慮し、インプラント治療の可否や適切な治療計画を立案していきます。
骨補填材や骨移植の活用
骨粗鬆症の患者様の中には、顎の骨が薄く、インプラントを埋入するのに十分な骨量が確保できないケースがあります。その場合、骨補填材や骨移植を活用することで、インプラント治療を成功へと導くことができるのです。
骨補填材には、自家骨(患者様自身の骨)や人工骨、異種骨(牛由来の骨)などがあり、それぞれの特性を活かして適切な材料を選択します。特に、人工骨や異種骨は、吸収が緩やかで骨再生が期待できるため、骨粗鬆症の方にも適用されることがあるのです。
短いインプラントや特殊加工の利用
骨密度が低い場合でも、短いインプラントや特殊な表面加工を施したインプラントを使うことで、しっかりと固定できるようになります。これにより、骨がもろい場合でも、インプラントが長持ちするようになるのです。
治療後のケアと定期健診の重要性
骨粗鬆症の方でも、適切なケアを行えば、インプラントは長持ちします。
定期的な検診と日々のケアを続けることで、インプラントを長く使い続けることができるのです。顎骨壊死の副作用(ARONJ/BRONJ/MRONJ)は細菌感染によって起こるため、口内を清潔に保っておくことが大切となります。一度顎骨壊死が起こってしまうと治療に長い時間がかかり、外科手術での対応が必要な場合もあるのです。
抜歯以外にも虫歯の放置による顎骨への歯性感染なども考えられるため、定期的に歯科検診を受けて口内環境をチェックしておくことで副作用が起こるリスクを避けることができます。日々のブラッシングやフロスを丁寧に行い、歯科医師の指導に従った口腔ケアを継続することが重要です。
顎骨壊死の初期症状に注意
以下のような症状が出た場合は、すみやかに担当の医師にご相談下さい。治療後、口の中の痛みがなかなか治まらない、下口唇にしびれがある、あごが腫れてきた、歯がぐらつく、歯が自然と抜けてしまった、歯ぐきから、白色あるいは灰色の硬いものが見えてきた、といった症状です。
広い範囲に感染が広がると、あごの骨が弱くなり、骨折することもありますので、口腔内は清潔にすることはもちろん、必ず先生に骨粗鬆症の治療中の旨を伝えましょう。早期発見・早期対応が、重症化を防ぐ鍵となるのです。
インプラント治療以外の選択肢も視野に入れる
骨粗鬆症の治療薬を長期間服用している方や、顎骨壊死のリスクが高いと判断された方には、インプラント治療以外の選択肢も検討する必要があります。
入れ歯による治療
入れ歯は、顎の骨に外科的な処置を加えることなく、失った歯を補うことができる治療法です。部分入れ歯や総入れ歯など、患者様の状態に合わせて選択できます。近年では、審美性や機能性に優れた入れ歯も開発されており、快適に使用できるようになっています。
ブリッジによる治療
ブリッジは、失った歯の両隣の歯を削り、そこに橋渡しをするように人工歯を固定する治療法です。入れ歯と比べて安定感があり、違和感が少ないというメリットがあります。ただし、健康な歯を削る必要があるため、慎重な判断が求められます。
歯科医師との相談が重要
どの治療法が最適かは、患者様の骨の状態、全身の健康状態、服用している薬、生活習慣など、さまざまな要因によって異なります。歯科医師とよく相談し、ご自身に合った治療法を選択することが大切です。
骨粗鬆症の方が歯科治療を受ける際の心構え

骨粗鬆症の治療を受けている方が歯科治療を受ける際には、いくつかの心構えが必要です。
正確な情報提供を心がける
歯科医師に対して、服用している薬の名前、服用期間、投与方法などを正確に伝えることが重要です。お薬手帳を持参するなど、具体的な情報を提供できるように準備しておきましょう。
主治医との連携を大切にする
骨粗鬆症の治療を行っている主治医と、歯科医師との連携が不可欠です。歯科治療を受ける予定があることを主治医に伝え、必要に応じて診療情報提供書を作成してもらうなど、医療機関同士の連携をスムーズにする工夫をしましょう。
定期的な検診を欠かさない
骨粗鬆症の治療薬を服用している方は、定期的に歯科検診を受けることが重要です。口腔内の状態を定期的にチェックすることで、問題が起きた際に早期発見・早期対応が可能となります。
むらせ歯科での総合的な口腔ケアのご提案

むらせ歯科では、患者様の口腔内の健康を総合的にサポートする体制を整えています。
日本矯正歯科学会の有資格者(非常勤)が治療を担当し、専門教育と臨床経験を積んだ医師による質の高い矯正治療を提供しています。また、「見えにくい・目立ちにくい」装置として、マウスピース型矯正装置「インビザライン」を導入しており、透明な装置を口にはめ、何度か新しいものに交換しながら徐々に歯を移動させる矯正治療方法を採用しています。
取り外し可能なため、食事制限がなく、歯磨きや装置の洗浄も簡単に行えるメリットがあります。ただし、装置の装着時間が患者の判断に委ねられるため、装着時間が短かったり装着しない期間があると治療期間が長くなるというデメリットもあるのです。
虫歯・歯周病予防の徹底
矯正専門の医院と異なり、むらせ歯科では虫歯治療や歯周病治療も行っているため、矯正治療前の初期処置(虫歯治療・歯周病治療・抜歯)や、矯正治療中の虫歯予防・歯周病予防が適切に対処できます。矯正専門医院では、これらの処置に対応していないところが多く、別の医院で処置を受ける必要があり、患者への負担が増える場合があるのです。
矯正治療中は器具が口腔内に装着されるため汚れが付きやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。歯並びが綺麗になっても、虫歯や歯周病によって口腔の審美性や機能性が損なわれては本末転倒です。「歯を綺麗に並べる」という基準だけではなく、「虫歯や歯周病を防ぐための処置をしっかりできるのか」も1つの判断基準として医院選びをして頂くことを強くお勧めします。
顎関節症への配慮
さらに、むらせ歯科では顎関節に配慮した治療も実施しています。不正咬合(悪い歯並び)の多くは顎関節にトラブルを抱えている場合が多いため、患者の希望に応じて矯正治療前にスプリント療法(別途費用11万円(税込み))を行い、歯並びの改善と同時に顎関節症の改善も行うのです。これにより、顎関節症に由来する頭痛や肩こりなどの不定愁訴、顎の痛みや疲れ、歯ぎしり、顎の異音などの症状改善が期待できます。
患者様とのコミュニケーションを大切に
むらせ歯科ならではのマウスピース矯正の特徴として、患者と医院とのコミュニケーションアプリを導入しています。このアプリでは、歯の動きをスライドショーで確認できたり、マウスピースの交換時期を通知する機能があり、患者とのコミュニケーションを円滑にするとともに、医院の作業効率化も図れ、サービス精度の向上につながっているのです。
まとめ:骨粗鬆症でも諦めないインプラント治療
骨粗鬆症の治療薬を服用されている方がインプラント治療を検討する際は、治療が可能かどうかを自己判断せず、必ず歯科医師と主治医に相談することが最も重要です。
治療前に、服用中の薬や治療歴を歯科医師に正確に伝えましょう。安全に治療を進めるため、歯科医師と主治医の連携が不可欠となります。リスクが高い場合は、インプラント以外の治療法も視野に入れることが大切です。
骨粗鬆症だからといって、インプラントを諦める必要はありません。今では、患者様の骨の状態に合わせたさまざまな治療法や技術が開発されているのです。骨の状態に応じて最適な治療を選ぶことで、安心してインプラントを使うことができます。適切なケアで長持ちする治療を実現し、食事を楽しめる生活の質の向上を目指しましょう。
むらせ歯科では、患者様の全身の状態を考慮した上で、安全な治療をご提供しています。骨粗鬆症の治療薬についてご不安な点があれば、まずはご相談ください。皆様のお口の健康、そして全身の健康をサポートできるよう、全力でサポートさせていただきます。
お問い合わせ・ご相談はお気軽にどうぞ。あなたに最適な治療法を一緒に見つけていきましょう。
著者情報
院長:村瀬 俊彦

| 血液型 | O型 |
|---|---|
| 星座 | おとめ座 |
| 趣味 | 映画鑑賞、読書 |
| 出身大学 | 東京歯科大学 |
| 専門 | 補綴 |












