指しゃぶりと歯並びの関係|やめられない時の対処法を専門医が解説
2025年12月9日
指しゃぶりと歯並びの関係|やめられない時の対処法を専門医が解説

お子さんの「指しゃぶり」が気になっている親御さんは多いのではないでしょうか。
可愛らしい仕草に見える一方で、「歯並びに影響が出るのでは」「いつまで続けていいの」といった不安を抱えている方も少なくありません。実際、指しゃぶりは年齢や頻度によって、お子さんの口腔発育に大きな影響を及ぼす可能性があります。
東京歯科大学で学び、矯正歯科の専門知識を持つ私が、指しゃぶりと歯並びの関係について詳しく解説します。
この記事では、指しゃぶりがなぜ起こるのか、どのような影響があるのか、そしてやめられない時の具体的な対処法まで、科学的根拠に基づいた情報をお伝えします。
指しゃぶりはなぜ起こる?年齢別の原因と特徴
指しゃぶりは、お子さんの成長過程で見られる自然な行動です。
実は、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる時から、すでに指しゃぶりは始まっています。超音波検査で胎児の様子を観察すると、多くの赤ちゃんが指をしゃぶっている姿が確認されており、これは生まれた後におっぱいを飲む練習をしていると考えられています。

0歳児の指しゃぶり|本能的な反射行動
生後数ヶ月の赤ちゃんの指しゃぶりは、「吸てつ反射」と呼ばれる原始反射の一つです。
これは口に触れたものに吸い付く本能的な行動で、生命維持に欠かせない重要な反射運動です。赤ちゃんは自分の手が口元に触れると、この反射によって自然と指をしゃぶり始めます。また、興奮したときなどに指を口に持っていく傾向があり、指をしゃぶることで自らが安心感を得ています。
歯が生え始める時期になると、歯茎の部分がむずがゆく、口の中で何かを噛んだり舐めたりすることで歯茎のかゆみを和らげようとすることもあります。さらに、おもちゃなどの物の特性をつかむために口に入れて試すという行為をします。その一部として指しゃぶりという行動が見られます。
1〜3歳児の指しゃぶり|学習と安心感の獲得
1〜3歳になると、0歳児の頃と比べて徐々に遊びが活発化していきます。
ただ物を舐めるだけだったのが、手を使う行動に変わっていきます。そのため、この期間では指しゃぶりの頻度が減るといわれています。こうした手を使う遊びの中で自我が芽生え、自己表現が増えていき、ストレスの発散方法も多様化していくでしょう。
その結果、指しゃぶりに頼ることが少なくなると考えられます。ただし、1〜3歳の段階では、まだまだ指しゃぶりを続ける子も一定数おり、あくまでも指しゃぶりの頻度が減るということを覚えておきましょう。退屈な時や眠い時など限られた場面で見られるようになります。
3歳以降の指しゃぶり|習慣化に注意が必要
3歳児〜就学前のこどもは、社会性が芽生え、自我が形成され、言葉を使って表現する能力が高まります。
この時期になると、指しゃぶりの頻度は徐々に減少していくでしょう。刺激が多くなる学校生活の準備や友だちとの関わり方を覚えるなど、新たな生活適応能力が求められるためです。この段階では、指しゃぶりをするこどもの割合は減少しますが、引き続き指しゃぶりを続ける子も一定数います。
6歳頃〜小学校入学後に指しゃぶりが続いていると、次第に歯並びに影響を及ぼす可能性があります。この年齢まで来ると、こどもの口腔の発育に関わるため、親が注意を促し、指しゃぶりの癖をやめさせる働きかけが必要となるでしょう。
指しゃぶりが歯並びに及ぼす具体的な影響
指しゃぶりは、お子さんの歯並びや顎の成長に大きな影響を与える可能性があります。
子どもが指しゃぶりをする際の、指を吸う力はかなり強いです。子どもの口から指を抜こうとしても、簡単には抜けないほどの力で指を吸っています。強い力で指を吸い続けていると、歯に強い圧力がかかるのです。口の中の圧力も強くなり、上顎の形にも影響がでる可能性もあります。
指しゃぶりする行為自体は、胎児の頃から始まっていて、乳児期は本能でしているものです。指しゃぶりすべてが歯並びに影響するわけではありません。問題は、歯が生えそろい顎の成長が活発な幼児期の指しゃぶりです。幼児期に長時間・長期的に指しゃぶりをしている場合は、注意をしましょう。

歯列狭窄|歯列の幅が狭くなる
歯列の形は本来、U字です。
しかし、指しゃぶりで指を吸う力が加わることで、奥歯が内側に押される力が働きます。奥歯が内側に押されることで、歯列の幅が狭くなってしまうのです。歯列の幅が狭くなると、歯が正しい位置に生えることができません。歯列が狭くなると歯が重なって生えてしまうこともあります。
指を吸うときには、ほっぺたの筋肉を使います。口をすぼめるような動きになり、歯が生える場所全体が狭くなってしまうこともあります。その結果、将来的に歯並びのガタガタを誘発してしまうこともあります。
上顎前突(出っ歯)|前歯が前方に突出
下の前歯に比べて、上の前歯が大きく前にでている状態が上顎前突です。
上顎前突は、出っ歯や下顎の後退によって起こります。指しゃぶりで口にくわえた指の力で、上の前歯が前方に傾いて、出っ歯になってしまうのです。歯列狭窄によって前歯が押し出されて、出っ歯になるケースもあります。どちらも、指しゃぶりが原因で起こる出っ歯の症状です。
また、指しゃぶりをするときは指をくわえるために、下顎を後ろに引きます。下顎を引いた状態が続くと、下顎が下がってしまうことも上顎前突の原因です。この状態になると、前歯で食べ物がかみづらくなり、発音も不明瞭になります。
開咬|上下の前歯が噛み合わない
上下の歯を噛み合わせたときに、奥歯は噛み合っているのに前歯の上下が噛み合わず、隙間ができている状態が開咬です。
指しゃぶりのときに、指を上下の歯ではさみます。常に歯と歯の間に指をはさんでいることで、前歯に指を通すための隙間ができてしまうのです。出っ歯も開咬の原因になります。指しゃぶりのほかに、舌を前歯ではさむ癖がある人も、開咬になりやすいです。
前歯でかむことができないので、奥歯の負担が大きくなり、発音もはっきりしなくなります。
歯並びの悪化がもたらす二次的な影響
指しゃぶりによって引き起こされる歯並びの問題は、単に見た目の問題だけではありません。
歯並びの悪化を放っておくことは、お子さんの健康や発達にさまざまなリスクをもたらします。ここでは、歯並びの問題が引き起こす二次的な影響について詳しく見ていきましょう。
口呼吸|虫歯や歯周病のリスク増加
上顎前突や開咬の状態が悪化すると、口をしっかり閉じることが難しくなります。
口が開いたままでいると、鼻呼吸の癖がつきません。鼻で呼吸ができないと、口で呼吸をする口呼吸の状態になります。口呼吸は、口臭や歯周病のリスクを高めるのです。また、口は鼻よりもウイルスなどが入り込みやすい場所になっています。そのため、口呼吸が癖になっていると、風邪やアレルギーになりやすいです。
矯正治療中は「器具」をお口の中に入れますので、汚れが付きやすく、虫歯や歯周病になってしまう可能性が高まります。せっかく歯並びが綺麗になったのに、虫歯や歯周病になってしまい、お口の「審美性」「機能性」がおかしくなってしまったら本末転倒ですよね。
舌癖|さらなる歯並びの悪化
指しゃぶりによって前歯に隙間ができると、その隙間が気になって舌を突き出す癖がついてしまうことがあります。
たとえ指しゃぶりを卒業しても、歯の隙間に舌を突っ込んでしまう癖が、残る可能性が高いです。舌癖があると、舌が歯の隙間からみえてしまうため、見た目もよくありませんし、歯並びの状態が、さらに悪化する可能性もあります。舌癖は、発音にも影響がでるため、舌足らずなしゃべり方になることもあるのです。
顔の歪み|顎の骨の成長への影響
指しゃぶりによって、噛み合わせが合わない状態が続くと、顎の骨が正しく成長することができません。
噛み合わせが悪いと、食べ物を咀嚼するときに、顎に大きな負担がかかります。左右どちらかに偏った噛み方をすることで、顔の筋肉や骨格のバランスが崩れ、顔の歪みにつながる可能性があります。顎関節にトラブルを抱える場合も多く、頭痛や肩こりなどの不定愁訴、顎の痛みや疲れ、歯ぎしり、顎の異音などの症状が現れることもあります。
指しゃぶりをやめさせるタイミングと判断基準
指しゃぶりをいつやめさせるべきか、多くの親御さんが悩むポイントです。
指しゃぶりは子どもの成長とともに自然に減少していく傾向にありますが、個人差があるのも事実です。ここでは年齢別の指しゃぶりの特徴と、いつまで見守っていてよいのかについて詳しくお話しします。
3歳まで|温かく見守る期間
3歳くらいまでの指しゃぶりは、お子さんの精神の成長発達における自然な行動ですので、無理にやめさせる必要はありません。
また、この時期の指しゃぶりは歯並びにもほとんど影響しないといわれています。指しゃぶりは赤ちゃんや子どもの健全な精神発達段階の一つとして必要な反応だといわれています。指しゃぶりを卒業するタイミングの目安として、3歳までは様子を見てあげてください。
ただし、3歳になった段階でずっと指しゃぶりを続けていて、かつ歯並びなど口の状態が気になったら、4歳になるまでの間にやめさせる方向にもっていくことができれば安心です。
4歳以降|積極的な対応が必要な時期
お子さんが4歳を過ぎても指しゃぶりを続けている場合は、注意が必要です。
この時期は歯や歯並び、あごの骨の発育が活発な大切な時期ですので、指しゃぶりが継続することで歯並びに影響を与える可能性が高くなります。3歳以降のお子さんが、指しゃぶりをしていても、一説には長時間続かない限りほとんど問題ないといわれています。
歯並びやあごの状態に問題がなく、「機嫌が悪い時に指しゃぶりをするくせがある」「寝る前にぐずって少し指しゃぶりをしている時がある」程度なら、無理にやめさせる必要はありません。本人にとっても精神的に安定するためのしぐさなので、見守ってあげましょう。
特に注意が必要なケース
以下のような場合は、年齢に関わらず早めの対応をお考えください。

- 指に「吸いダコ」ができるほどしつこい指しゃぶりを続けている場合
- 一日の中で長時間指しゃぶりをしている場合
- 新しい環境への不安から、かえって指しゃぶりが増えてしまった場合
- 寝ている間ずっと指しゃぶりをしているなど一日の中で長時間続けてしまっている場合
これらの状況では、指しゃぶりをやめられるように環境を整えてサポートしてあげることが大切です。
指しゃぶりをやめさせる具体的な方法
指しゃぶりは歯並びに影響を及ぼしますが、小さい子どもにとっては、精神的な安定を得るために必要な行動である場合もあります。
よくあるのが「寂しさをまぎらわせるための指しゃぶり」です。弟や妹が産まれて、「お父さんやお母さんがかまってくれない」「もっと遊んでほしい」という気持ちが指しゃぶりに現れることがあります。
家庭でできる指しゃぶり対策
3歳を過ぎても指しゃぶりをずっと続けているお子さんの場合、「本当は自分でもやめたいけれど、やめられない」ということが多々あります。
ご家庭で、お子さんが指しゃぶりをスムーズにやめられるようにサポートしてあげてください。具体的には、指しゃぶりをしている時に声かけをして意識を別のところに向けさせたり、手袋をして指しゃぶりをした時に違和感を与えることで、だんだんおさまることがあります。
他にも、「お気に入りのキャラクターのばんそうこうを指に貼って、うっかり口に入れるのを防ぐ」「赤ちゃん用品店で売っている、口に入れると苦い味がする無害なマニキュアを利用する」などの方法があります。
優しく教えてあげる|理由を説明する
3歳以降になり、お話が理解できるようになったら「なぜ、指しゃぶりがダメなのか」「お口の中にバイ菌が入っちゃうんだよ」など、やめる理由を優しく教えてあげて下さい。
「もうお兄ちゃん・お姉ちゃんだからやめようね」「〇歳になったんだから、やめようね」といった言葉で、お子様に自分の「成長」を意識させて指しゃぶりをやめさせるという方法です。ただし、これも、1回言ったからやめられるというものではありません。あまり神経質にならないように、気長に続けていきましょう。
指しゃぶり以外の楽しみを与える
新しいおもちゃで気をそらしたり、おやつやごはんをあげることで、指しゃぶり以外の楽しみを与えてあげましょう。
遊びに誘ったり、絵本を読んであげるなどの方法で、お子様を刺激してあげましょう。楽しいこと、面白いことを見つけると、そちらに気がそれて指しゃぶりをやめることが期待できます。もちろん、1回でやめられるわけではありませんので、根気強く、特にお子様が時間を持て余している時など、積極的に遊びに誘ってあげてください。
スキンシップを増やす|愛情を伝える
指しゃぶりをする理由が、寂しい気持ちなどの精神的な理由が原因の場合はたくさんスキンシップをとりましょう。
例えば、寝る前に手を握ったり、ぎゅっと抱きしめて安心させてあげましょう。親御さんからの愛情をいっぱい感じれば、少しづつ指しゃぶりは減っていきます。指しゃぶりに使っていた手を、お母さんやお父さんとのスキンシップに使ってもらう方法です。手を握り合う、指を握らせる、手のひらのマッサージをする、手や指を使った遊びをするといったことに楽しさを覚えると、指しゃぶりの回数が減ることが期待できます。
やめさせる際の注意点
子どもの気持ちを無視して無理やりやめさせようとすると、他のものに執着するようになったり、頭の毛を抜く、まゆげを抜くといった問題行動をとる可能性があります。
「何回言ってもやめない」と親御さんはイライラしてしまうこともあると思いますが、指しゃぶりを卒業する時期は個人差があります。他の子と比べることで焦って子どもに怒ってしまうと、逆にストレスになってしまいます。まわりと比べずに、時間をかけて気長に取り組んでいきましょう。厳しく叱るのではなく、優しくアプローチすることを心掛けましょう。
大きな声で叱ったり、手を取って無理に禁止する方法はおすすめできません。お子様も「意識してやっているわけではない」ということを理解してあげましょう。
歯科医院での専門的な指しゃぶり対策
家庭での対策だけでは改善が難しい場合、歯科医院での専門的なサポートを受けることができます。
指しゃぶりによって上下の前歯にすき間がある、前歯で食べ物がかみづらい、発音がはっきりしないなど不正咬合の症状がみられる場合は、小児歯科で治療を行う必要があります。また、小児歯科では家庭で指しゃぶりのくせがなかなか治らない場合の指導もしています。
お子さんのくせや口の中の状態にあわせて専用の器具を入れて、上の歯の裏側に指が入らないようにする方法など、さまざまな治療法があります。家庭だけでかかえこまず、ぜひ小児歯科へご相談ください。
むらせ歯科の矯正治療の特徴
むらせ歯科では、日本矯正歯科学会の有資格者(非常勤)が治療を担当し、専門教育と臨床経験を積んだ医師による質の高い治療を提供しています。
治療中の虫歯・歯周病予防のためのシステムが確立されており、子供の矯正治療は成人と比較して治療期間が短く済み、費用も大幅に抑えられる体制を整えています。矯正治療を「専門」に行っている医院と異なり、当院では虫歯治療や歯周病治療も行っていますので、矯正治療を行う前の初期処置(虫歯治療・歯周病治療・抜歯)、矯正治療中の虫歯予防・歯周病予防が適切に対処できます。
「歯を綺麗に並べる」という基準だけではなく、「虫歯や歯周病を防ぐための処置をしっかりできるのか」も1つの判断基準として医院選びをして頂くことを強くお勧めします。
目立ちにくいマウスピース矯正「インビザライン」
むらせ歯科では、「見えにくい・目立ちにくい」装置として、マウスピース型矯正装置「インビザライン」を導入しています。
このシステムは透明な装置を口にはめ、何度か新しいものに交換しながら徐々に歯を移動させる矯正治療方法です。取り外し可能なため、食事制限がなく、歯磨きや装置の洗浄も簡単に行えるメリットがあります。ただし、装置の装着時間が患者の判断に委ねられるため、装着時間が短かったり装着しない期間があると治療期間が長くなるというデメリットもあります。
当院では患者さんと医院とのコミュニケーションアプリを導入しています。このアプリでは、歯の動きをスライドショーで確認できたり、マウスピースの交換時期を通知する機能があり、患者さんとのコミュニケーションを円滑にするとともに、医院の作業効率化も図れ、サービス精度の向上につながっています。
顎関節に配慮した治療
不正咬合(悪い歯並び)の多くは顎関節にトラブルを持つ方が多いため、患者さんの希望がある場合は、むらせ歯科では矯正治療に入る前にスプリント療法(別途費用11万円(税込み))を行い、歯並びを綺麗に整えるだけではなく、顎関節症の改善も同時に行っていきます。
これにより、顎関節症に由来する不定愁訴(頭痛/肩こりなど)、顎の痛み/疲れ、歯ぎしり改善、顎の異音などの症状改善が可能です。
まとめ|指しゃぶりは適切な時期に優しく対処を
指しゃぶりは、お子さんの成長過程で見られる自然な行動です。
3歳までの指しゃぶりは、精神の成長発達における自然な行動ですので、無理にやめさせる必要はありません。しかし、4歳以降も長時間・長期的に指しゃぶりを続けている場合は、歯列狭窄、上顎前突(出っ歯)、開咬といった歯並びの問題を引き起こす可能性があります。
指しゃぶりをやめさせる際は、叱らずに優しくアプローチすることが大切です。理由を説明したり、スキンシップを増やしたり、指しゃぶり以外の楽しみを与えることで、徐々にやめられるようサポートしてあげましょう。家庭での対策だけでは難しい場合は、小児歯科での専門的なサポートを受けることもできます。
むらせ歯科では、日本矯正歯科学会の有資格者による質の高い矯正治療を提供しており、治療中の虫歯・歯周病予防のシステムも確立されています。お子さんの指しゃぶりや歯並びについてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。お子さんの健やかな成長と美しい歯並びのために、適切な時期に優しく対処していきましょう。











